住宅の欠陥は保証されるのか!?

文:司法書士 庄司法務事務所 代表 庄司  遼 氏

不動産の購入に際して注意したいポイントを、司法書士の観点からアドバイスさせていただきます。
今回は、大きな買い物となる住宅に欠陥が見つかった場合、どういう保証があるのかなど、住宅の保証に関する法律について解説していきます。
住宅を購入したあとに欠陥が見つかったら、まずは売主、ハウスメーカーなどに報告して、修理をお願いすると思います。アフターサービスとして修理してもらえれば問題ありませんが、修理してくれないとか、そもそも修理できない欠陥だった場合は、どうしたら良いでしょうか。

◇「瑕疵(かし)担保責任」とは!?

瑕疵担保責任とは、売買物件に欠陥(瑕疵)があったときに、売主が買主に対して負う責任のことを言います。
日常生活や経済活動など、私たちの日々の活動における権利義務の基本的なルールを定めた「民法」という法律では、瑕疵担保責任について次のように定めています。

1:買主は、その欠陥を知らないことに過失がなければ(無過失
2:売主に対して、損害賠償請求契約の解除ができる
3:ただし、2は買主が瑕疵を知ってから1年以内にしなければならない

つまり、買主は、たとえば買ってから8年後に瑕疵を知った場合でも、その時点から1年間は権利行使(2:の請求)ができるわけです。
このような民法の定めでは、売主がいつまでも責任を免れないことになりますので、民法の定めにかかわらず、当事者間の合意があれば、責任を免除したりするなど、契約内容を自由に決めることができます。
もっとも、専門的な知識を持たない買主は、不利な契約を結ばれてしまうおそれがありますので、「宅建業法」では、不動産業者(宅建業者)が自ら売主となる物件の売買においては、民法の規定よりも買主に不利な特約をしてはいけないと定めています。
ただし、例外として、買主の権利行使の期間については、物件の引渡しの日から最短で2年となる特約はできることになっています。

◇新築住宅は保証期間が10年!

このような宅建業法の規定によって、不動産業者が売主となる場合、責任を負う期間は「引渡しから2年」という契約内容となるのが一般的です。
しかし、新築住宅の欠陥を2年以内に発見することは困難なことも多いため、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(通称「品確法」)において、新築住宅の売主や工事請負業者の責任期間が、引渡しから10年間と定められました。この保証期間の短縮は、いくら契約で定めたとしても許されず、無効となります。また、民法の規定では、損害賠償と契約の解除しか認められていませんでしたが、品確法ではこれらに加えて瑕疵の修理を求めることもできるようになりました。
この品確法の保証は、新築住宅のみが対象となっていることに注意です。また、あらゆる瑕疵(欠陥)が対象となるのではなく、1:構造耐力上主要な部分(例:基礎・柱・床など)、2:雨水の浸入を防止する部分(例:屋根・外壁など)の瑕疵に限定されています。

住宅に深刻な欠陥があったら、まずは売主や工務店に連絡・相談しよう。どうしてもトラブルになりそうなら、専門家である司法書士や弁護士に相談するのが良いかも。


◇保証制度により請求はできるけど…

品確法によって、保証期間が10年になったから安心かといえば、実はそうではないのです。業者に修理や損害賠償の請求をしても、資金不足を理由に修理できないと言われ、最悪の場合、業者が倒産することもあり得ます。構造計算書偽装問題でも明らかになったように、これでは、品確法の保証制度は絵に描いた餅となってしまいます。そこで、業者の瑕疵担保責任の履行を確保するための法律として「住宅瑕疵担保履行法」が制定され、平成21年10月1日から施行されています。この法律により、業者は、あらかじめ供託金を積んでおくことや、保険に加入することが義務付けられたので、業者の資金不足や倒産により住宅購入者に負担がかかる心配はなくなりました。また、欠陥の有無などで業者とトラブルになりそうなときは、紛争処理制度も利用できます。

◇大切な住まいは自分で守る

このように、住宅購入者を守る法律や制度は整備されてきています。また、ハウスメーカーが独自に行っている保証などもありますので、自分でしっかり調べることが大切です。建てる前も建てた後も、大切な住まいは自分で守るということを意識し、行動していきたいですね。

更新日:2017年5月16日


庄司  遼(しょうじりょう)氏
司法書士 庄司法務事務所 代表。
司法書士、行政書士、金融広報アドバイザー。会津若松市出身。千葉大学法学科卒業後、25歳の時に司法書士試験に合格。郡山市内の司法書士事務所での勤務を経て、2013年3月司法書士庄司法務事務所を開業。相続・売買などの不動産登記、会社設立・役員変更・NPO法人などの商業・法人登記、成年後見業務を主な業務として、地域に密着したサービスの提供を行っている。

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