さまざまな「相続登記」の方法

住まいに関わる相続の大切なおはなし その2
さまざまな「相続登記」の方法
文:司法書士法人 あい事務所 代表 田中 裕志 氏

◇前回のおさらい、「相続登記は大事です」

まず、前回のおさらいです。
・家を建てるためにはその土地が「家を建てられる土地かどうか」をまず確認しなければなりません。
・物理的な理由以外にも、名義の問題があって家を建てられないことも少なくありません。
・その土地の名義が故人の場合は住宅ローンを借りられず、家を建てる資金がないという事態になることも。
・それを避けるために、相続登記(所有権の名義替え)を行い、現在生きている人の名義にすることが大事です。

ここまで書きました。今回は、その相続登記の方法を具体的に見ていきましょう。

◇「家督相続」~土地の名義が戦前に亡くなった人の場合

相続登記の方法は、登記名義人の亡くなった時期によって違います。まず戦前に亡くなった人の場合には現在の法律(民法)ではなくて、その当時の旧民法が適用になります。戦前は現在とは相続に関する法律が大きく異なっていて、家制度を基本としています。よって、家長1人が「家督相続」という制度により家の財産(もちろん土地も含む)をそっくり引き継ぐという方法になります。家長は通常、長男がなる場合が多いです。古い戸籍を見ると「○○が家督相続」と記載されているので、それをもとに相続登記ができます。

◇「遺産分割」~現在の相続の場合

愛する家族の笑顔を守るためにも、相続登記のことを早めに考えましょう。

戦前以降(昭和22年以降)に亡くなった人の相続登記は、(いくつかの改正があるものの)基本的には家督相続ではなく、複数の相続人による「遺産分割」という方法により行います。例えば、登記名義人の夫が亡くなり、妻と子ども2人がいる場合、この3人が法定相続人(法律上相続の権利を有する人)になります。相続登記を行う場合には、3人で遺産分割協議を行います。「土地の名義を3人のうちだれにするか」を決める話し合いです。3分の1ずつ3人の共有(共同所有)にしても良いですし、3人のうちの1人の所有にしてもかまいません。法定相続人である3人が合意すれば3人中だれの名義にするかは自由に決めることができます。

遺産分割協議により誰の名義にするか決まったら、次は登記手続きです。法定相続人を特定する戸籍などを添付、遺産分割協議の内容を書面にまとめ(遺産分割協議書)、各自署名実印押印して印鑑証明書を付けて法務局に相続登記を申請します。不備がなければ1週間程度で名義変更手続きが完了します。新たな権利証(登記識別情報といいます)が発行されて、登記簿(全部事項証明書といいます)が書き替えられます(通常、この一連の手続きを司法書士に依頼する人が多いですが、自分で行う人もいるようです)。

ただし、遺産分割協議は、法定相続人全員の合意が必要です。法定相続人のうち1人でも反対すると遺産分割協議はまとまらず、相続登記を行うことができません。相続登記が進まない最大の原因がここにあります。戦前の家督相続であれば、法律により家長である1人が相続により引き継ぐので、原則的に遺産分割の合意は必要ありませんでした。しかし、現在の法律では相続の権利は複数人(例えば、妻と子ども全員)に引き継がれるので、「合意できない」という問題が生じます。

◇「遺産分割調停・審判」~遺産分割協議がまとまらない場合

当事者間の遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。これは、裁判所の調停委員会に間に入ってもらうことにより、話し合いを進めて結論を得るやり方です。当事者それぞれの主張を聞いたうえで、法的、常識的な結論に導くために裁判所で話し合います。これによって調停(話し合い)が成立した場合には裁判所により話し合いの内容を記載した調停調書が作成され、それをもとに相続登記を行うことができます。調停によっても話し合いがまとまらないときには、裁判所により審判がなされることがあります。これは、裁判所の一方的な決定なので不服であれば一定期間に異議を申し立てることができます。

◇遺言を残す

当事者による遺産分割協議→(合意しなければ)裁判所による調停、審判という流れを見てきましたが、登記の名義人(所有者)が遺言を残すという方法により相続登記を行うやり方もあります。例えば、ある土地を長男Aに残したい場合、「○○市○○町〇番の土地をAに相続させる」との遺言書を残すことによりスムーズに相続登記を行うことができます。有効な遺言書がある場合には、法定相続人間の遺産分割協議をしなくても遺言書を添付して相続登記を行います。つまり、他の相続人から実印や印鑑証明書をもらうことなく相続登記を行うことができるわけです。司法書士である私は、生前に相続の相談を受ける場合には、遺言の効果、方法を説明し相談者と遺言の検討をします。その結果、遺言書を残す人が増えています。

遺言には大きく分けて、自分で書く「自筆証書遺言」と公証人に書いてもらう「公正証書遺言」があります。それぞれに特徴がありますが、確実性、信用性の点から公正証書遺言を勧めることが多いです。遺言を残す場合には、必ず「遺留分」(いりゅうぶん、と読みます)に注意しなければなりません。遺留分とは、遺言によっても侵害できない相続人の権利のことです。トラブルをなくすために遺言を残したのに、その遺言がトラブルの原因になったら本末転倒となってしまいます。遺言を残す際には専門家に相談することをお勧めします。

更新日:2017年10月10日

まとめ
○相続登記の具体的な方法
1、家長1人が家の財産をそっくり引き継ぐ「家督相続」
2、複数の相続人で遺産分割協議を行う「遺産分割」
3、遺産分割協議がまとまらないとき家庭裁判所に申し立てる「遺産分割調停」。
4、調停でまとまらないときに裁判所によって行われる「審判」。
5、登記の名義人が残す「遺言」。


田中 裕志(たなか ひろし)氏
司法書士法人あい事務所 代表。
司法書士(簡裁訴訟代理関係業務認定)、行政書士。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、事業再生士補、貸金業取扱主任者と多くの資格を持つ。
会津若松市出身。千葉大学法学科卒業後、松戸市内の司法書士事務所での勤務を経て、平成10年に会津で個人事務所を開業。平成25年に司法書士法人あい事務所を設立した。平成27・28年度は会津若松商工会議所青年部会長も務め、精力的に活動している。「ひとりひとりの問題解決に、全力を尽くす」をモットーに、一期一会の心構えで仕事を通して地域貢献に努めている。

 

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