最初に資金計画(マネープラン)を立てることがなぜ大事なのか?

文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 菊地智恵 氏

◇まずは夢を膨らます前に資金計画

「家が欲しい」と思った時、まず何をしますか?多くの方は住宅展示場を見に行ったり、住宅雑誌等で素敵な外観や暖かそうな室内を見たりして、こんなところで生活したいなぁと想像し、夢を膨らませるのではないかと思います。せっかく建てるのだから、思い描く要望は叶えたいものですよね。
楽しい時に水を差すようですが、家造りで真っ先に取り組むことは、展示場を見ることではなくて「資金計画」なんです。お金の計画が立っていないのに大きな買い物をするってなかなかのチャレンジャーですからね。“そんなことわかってるよ~”と思うかもしれませんが、営業の方から見積をもらって初めてお金のことを考え出すという方がまだまだ多くいらっしゃいます。思い描く家を金額にしてみると想像以上になっていて、でも何とか手に入れたいから、自己資金なしで住宅ローンをご夫婦の連帯債務にして借入金額マックス!という方もいらっしゃるのです(そこで本当にこの金額を借りてローンを組んで果たして返していけるのか不安になってしまってご相談に来る方、結構多いんです)。
例え借入金額がマックスでも、返していける秘策があるならいいのです。確認したいのは、「しばらく(ここ数年)はなんとかやりくりして返していけるから大丈夫!」になっていませんか?という点です。

◇ローンを組む前から完済を視野に入れる

住宅ローンは35年返済で組む方が圧倒的に多く、家を建てる年齢は30代後半が多いので、完済は70歳を超えます。大半の方がそのローン返済の35年のうちに子育てがひと段落し、定年退職を迎えます。今は退職金が少ない、または出ないという会社もあるので、退職金でローン完済も難しく、ローンが年金生活にも食い込んできます。
“そんな先のことその時になってから考えるよ~”って70歳あたりでお金が足りなくなることに、直前になってから気づくとしたら怖すぎませんか?
住宅ローンの借入額と金利タイプが自分に合っていないと、完済までの間に2回苦しくなる時が出てきます。「お子さんの教育費が掛かる時期」と「退職後から年金スタートまでの時期」です。家が建ってローンの返済をスタートさせる頃はまだお子さんも小さく、お金がそんなにかからないためしばらくは順調に進みますが、大学への進学費が家計を圧迫します。ただそこは奨学金や教育ローンがありますから、なんとかやりくりすることが可能です。そこを何とか乗り越えて、ローン完済まであと10年強という時に60歳を過ぎます。元気で70歳まで働くことができたらいいのですが、もし体調が思わしくなかったら・・、もし住宅ローンの金利がそのタイミングで上昇したら・・というリスクも考えておかないと、ローン完済手前で資金不足という事態になりかねません。その時点でお金を貸してくれるところはほぼないでしょう。

◇資金計画と同時進行で家計見直し

そうするとやはり間取りや壁紙の色を考える前に、資金計画(マネープラン)が先なんだなとなりますよね。最初の段階で完済まで安心して返していける資金計画を立てること、完済までに考えられるリスク(大病や給料減など)をある程度クリアしておくことが必要になってきます。そして忘れてならないのが、「家計を見直しておくこと」です。いくらローンを小さくしても家計を見直しておかなければザルに水を流して溜まらないのと同じですからね。
ぜひ老後までの収入と支出をすべて書き出して表にしてみて、そこに想定している住宅ローン金額を入れ込んでみて、やりくりができそうかを計算してみてください。もしご自分では甘くなってしまいそうという方は、専門家の手を借りるというのも一つの手です。住宅ローンの適正金額を客観的にみて返していける額かを「診断」する、リスク管理、家計見直しがファイナンシャルプランナーの役目です。

◇“わくわく”しながら家を建てる

以前、尊敬している工務店の営業の方に、「菊地さん、家ってわくわくしながら建てるものだよね」と会話の流れで何気なく言われたことがあります。その方は、いつもそう思いながら施主様と接しておられるので当たり前のことをおっしゃったのだと思いますが、ものすごく感動したので心に残っています。この“わくわく”にはいろんな意味が込められていて、施主様やご家族様の気持ちはもちろん、建てる側に携わるひとりひとりの家への思いも入っていると感じ取れました。そう思ったら、みんなの熱い思いで造り上げる家ってすごい!って、感動が押し寄せてきたんです。そんな風に皆が“わくわく”している中で家造りを楽しんで欲しいからこそ、真っ先に資金計画をして安心して臨んでほしいのです。そして、みんなの思いが詰まった家を大切に長く住んで欲しいと、心から思っています。

更新日:2017年5月16日


菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできるようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。

 

 

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