- Home
- 菊地 智恵, 資金計画・お金のお話
- 住宅ローンの「イロハ」~種類と選び方の初歩
住宅ローンの「イロハ」~種類と選び方の初歩
文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 ファイナンシャルプランナー 菊地智恵 氏
◇マネープランのそもそもである「住宅ローン」
家を建てる時、「全額キャッシュで!」という方はごく少なく、多くの方が住宅ローンを組みます。そのための下準備として「マネープランを作って、自分たちの身の丈に合った資金計画になっているかを見定めましょう」という話を今までしてきました。
今回は、そもそもの住宅ローンのお話をさせていただきます。
◇0.1%以下の金利差でも、総支払額は数十万円増える
家を建てることを考えている方であれば、住宅ローンのことは真っ先に検索されると思いますのでご存知とは思いますが、住宅ローンには種類があり、各金融機関で金利が異なります。
どこの金利が安いのか、とても気になりますよね。
例えば、3,000万円を35年間で返済(35年間金利が変化しないと仮定)するとします。その時金利1.50%で借りるのと、1.55%で借りるのでは、0.05%の差なので“誤差”程度にしか見えませんが、月々の返済額では736円、35年間の総支払額では約30万円もの差が出るのです。
住宅ローンは借りる金額が大きくて返済期間が長いので、少しの金利差が総支払額に大きな影響を及ぼします。金利のことが気になるのは当然ですよね。
◇住宅ローンの3つの種類
さて、住宅ローンの種類には、『変動金利型』、『固定金利選択型(3年固定など)』、『全期間固定金利型』があります。
『変動』は半年毎に金利が変わり、『3年固定』は3年後に金利の見直し、『全期間固定』はずっと金利が変わらない、それぞれそのような商品です。
そもそもが違う商品なので、各々の金利には当然差があります。『変動』はスタート時の金利を1%より低くしている金融機関が多く、『全期間固定』(フラット35・9割融資)については、2018年2月の金利で1.40%となっています。
『変動』は半年毎の見直し(5年は支払額が変わらないルールはありますが)なので、「10年、20年先の将来の金利はわからない。上がっているかもしれないし、下がっているかもしれない」というもので、総支払額は算出できません。
『全期間固定』は文字通り、返済期間中に金利が変わることはないので、総支払額が確定し将来の予定が立てやすくなります。
例えば『変動』が低いままで推移すれば、「総支払額で圧倒的に安かった」ということにもなる可能性はあります。
では、一般的にはどの種類のローンが多く選ばれているのでしょうか。
よくお聞きしますが、『変動』や『固定金利選択』を選ぶ方が大半です。おそらく、それらのスタート時の低い金利で判断して選択されているのではないでしょうか。
◇自分に合ったローンに出会えないこともある
「うーん、結局どれがいいかわからないよ」と思うかもしれませんが、大事なことは、それぞれの商品の特徴を知り、自分に合った商品を自分で選択するということです。
住宅ローンは、建築会社さんから金融機関を勧められたり、ご自身の取引銀行に相談に行かれたりして、プロが勧める商品の中で選択する方がほとんどだと思います。
しかしそれが果たして自分に合っている商品かは、みなさんがご自身で見定める必要があります。
例えば『全期間固定』のフラット35は、転職して間もなかったり、正社員でなかったり、事業用資金の借入がある自営業だったりする少し不安定な方々でも、比較的に審査が通りやすく勧められやすいと思います。
逆に正社員などの安定した方々には(その建築屋さんでフラット35の取扱いをしているでもない限り)、勧められる可能性は低いはずです。
そもそも『全期間固定』を勧められないから、選択肢にも上らないという方もいらっしゃるでしょう。つまり、マネープランを作ってみると、総支払額がしっかりわかっている『全期間固定』が合っていそうな方でも、それを知る機会が無くて、違う住宅ローンを選択しているということもあるかもしれないということです。
◇ローンの特徴を知った上で、自分で選択する
ローンの相談を受けた銀行は、もちろん自行の商品を売りたいので、フラット35を勧めることはまずないでしょう。その銀行の低い金利の商品をみなさんが選ぶことを、否定するつもりはありません。
しかし、様々なローンを知ることと、知った上で“今”だけではなく将来のことも考えて自分で選択することは、確実に毎月返済していく上でも大事なことだと思います。
それぞれの商品の特徴(メリット・デメリット、どんな人に合っている商品なのか、過去と今の金利の推移、など)を知った上で、ご自身に合っている商品を選んでくださいね。
選ぶ上でもマネープランを作ることは必須ですよ!
更新日:2018年2月9日
菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできるようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。