相続に関するQ&A (3)

文:司法書士法人 あい事務所 代表 田中 裕志 氏
住まいに関わる相続の大切なおはなし その6
相続に関するご相談 3


相続に関する具体的な相談をご紹介します。以下は私が実際に以前いただいたご相談と、その回答です。

《相談内容》

長男が急死しました。妻子はなく、私たち両親と弟(次男)が1人います。弟はこの6年ぐらい行方不明です。長男は、自営業をしていて、多額の借金があります。自宅の名義は長男です。今後どうすればよいか教えてください。

《回  答》

相続手続きには、期限があるものがあります。
そのひとつが相続放棄です。本人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述(申立)する必要があります。相続放棄が受理されると、法的には初めから相続人ではなかったことになり、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぎません。ただし相続放棄は撤回ができないので慎重な検討が必要です。
相談者の場合には、両親が相続放棄をすると、原則本人の弟が相続人となります。しかし、行方不明で連絡がとれません。この場合、借金の支払い義務は一応弟が引き継ぎます。銀行等の債権者は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てて、その管理人を相手に自宅等の競売を行い、換価(売却)して回収します。
自宅が売れれば、相談者らは出ていかなければなりません。その間は少なくても数ヶ月はありますが、新しい住居の準備はしなくてはならないでしょう。高齢により自分で手配することが難しく、援助してくれる親戚等がいなければ、地域の役場や包括支援センター等に相談することをお勧めします。
このケースでは、借金の処理と住居の確保が最も重要な課題だと思われます。早急に専門家を交えて検討しましょう。

更新日:2019年8月31日


田中 裕志(たなか ひろし)氏
司法書士法人あい事務所 代表。
司法書士(簡裁訴訟代理関係業務認定)、行政書士。宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、事業再生士補、貸金業取扱主任者と多くの資格を持つ。
会津若松市出身。千葉大学法学科卒業後、松戸市内の司法書士事務所での勤務を経て、平成10年に会津で個人事務所を開業。平成25年に司法書士法人あい事務所を設立した。平成27・28年度は会津若松商工会議所青年部会長も務め、精力的に活動している。「ひとりひとりの問題解決に、全力を尽くす」をモットーに、一期一会の心構えで仕事を通して地域貢献に努めている。

 

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