住宅ローン減税の勘違い

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住宅ローン減税の勘違い

文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 ファイナンシャルプランナー 菊地智恵 氏

新築等で住宅ローンを組む時に、所得税額等から税額控除を受けられる制度が「住宅ローン減税」。住宅を取得する方の支援、促進を目的とした制度で、マイホーム購入する方にはおなじみのありがたい制度ですよね。
おなじみではあるのですが、内容はちょこちょこ変わっています。2024年に新居が完成して入居する方で、長期優良・ZEH水準・省エネ基準適合の住宅に該当しない住宅の場合、この減税の恩恵が受けられないことになったのは、かなり大きな変更です。
(該当しない住宅でも、2023年のうちに建築確認を受けていて2024年6月末までに入居の場合は、2,000万円10年の減税になるようです。尚ご確認くださいね)。

コロナ禍以降借入金額が増えて、今は3,500万円超の住宅ローンを組む方が大半です。年収が高め(550万円超とか)の方は、所得税も多く支払い、借入も大きく出来ます。ローン減税は、支払っている税金が大きくカットされるものなので、「借入金額多い、年収高い」方がローン減税でのメリットを多く受けられる、ことになります。

ユーチューブではこの制度のことを、単純に数百万円のお金がもらえる、実際の減税額よりも受取りが多いように話す(払っている税金以上は戻らない)、住民税からの減税額を間違っている、等々、正しくない内容で紹介されている情報も見受けられます。これを信用してしまうと、想定より減税にならなくてがっかりということになるので、注意が必要です。

例えば、2024年に新居が完成して入居(住民票異動)して、長期優良住宅として認定書類を受けている場合、制度としては、借入限度額は4,500万円(子育て世帯(19歳未満の子)・若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが40歳未満)の場合5,000万円)になります。

実際に、この制度の恩恵をマックスで受けられる方は、子育て世帯の場合、住宅ローン借入額が5,000万円を優に超えている方になります。初年度の住宅ローン年末残高が5,000万円を超えていたら、35万円の税額控除が受けられます(そもそも5,000万円とか借りて老後まで返済大丈夫?というところは前提としてありますが、そこはしっかり計算してクリアしていると仮定します)。
ただ35万円がもらえるわけではなく、新居が完成した翌年に確定申告をして、所得税については「払った税金から戻る」というものです。所得税から35万円全額引けるという方は、年収700万円超という方になるので、そこまで収入も所得税も無いわという場合は、引き切れない分は住民税から引かれることになったり(上限97,500円)、もしくは債務者を2人(ご夫婦)にしてそれぞれローン控除を受けるということも出来ます(連帯保証人は住宅ローン控除受けられません)。

ただ、ご夫婦おふたりで住宅ローン控除を受けた方がお得だから、連帯債務にした方がいいという話がよくありますが、奥様がご出産される可能性がある場合は、支払う税金が少ないのでローン減税でのメリットも減っちゃいます。連帯債務にされる場合は、借入金額・収入・持ち分・保険・ローン減税の兼ね合いで決める必要があるので、ローン減税のメリットの為だけに連帯債務にすると、結局、収入合算で借入額が増やせてしまって後で返済が大変になる、ということもありえるので、安心して返済出来る額を借入するということが大前提にはなります。

更新日:2024年4月24日


菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできる

ようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。2022年春から、「マイホーム買い方辞典」というサイトも開設した。

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