家を建てる時、自己資金はどこにどのくらい充てるべきか?

文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 ファイナンシャルプランナー 菊地智恵 氏

◇「頭金」はどのくらいが目安なの?
“頭金なしで建てられます”
広告などで見かけたりする言葉です。
そもそも頭金って何か?ですが、家を建てる時に支払う現金のことで、自己資金で用意する場合もあれば、親御さんからの贈与で用意できる場合もあると思います。
家は「頭金」+「住宅ローン」で購入する・建てるということですね。
では頭金はどのくらい用意したらいいのか?とよくご相談時にお客様に質問を受けます。預貯金の額はそのご家庭によって差があるので一概には言えませんが、できれば土地・建物の1割を頭金として、さらに諸費用分を自己資金で賄えるとベストかなと思います。
土地と建物で2,800万円、諸費用で200万円で総額3,000万円とすると、1割の280万円+200万円で480万円になりますね。

頭金があった方がいいと言われるのは、住宅ローンの借入額を少なくすることができるからです。借入額が少なければ、支払う利息も減り、総支払額を抑えることができます。
住宅ローンの借入額は少ない方が月々の支払額を少なくできるし、老後の生活に回せるお金にも余裕ができますよね。
さらに、頭金が多く用意できれば金融機関の印象も良く審査にも有利になるのです。そうするとなるべく頭金を多くして借入を少なくしたいところですよね。
でも預貯金すべてを頭金にすると万が一に備えるお金が無くなってしまいます(万が一とはやむをえない転職や病気、予定していなかった大きな出費などです)。
どのくらいまでを頭金にしていいのかは、半年分の生活費を残すとか1年分の年収を残すなどと言う方もいれば、低金利だから住宅ローンを多く借りた方がいいという方もいますが、必ずマネープランを作ってから判断するようにしてください。
今までのご相談事例でも、預貯金が多くある方であっても今後の教育費や車の購入を考えて、頭金は1割にして残り住宅ローンにしたというお客様もいれば、逆に出せるだけ頭金に充てたという方もいらっしゃいました。どちらもマネープランを作って根拠ある数字を把握しているからこそできたご判断だったと思います。

◇忘れちゃならない家を建てる時の「諸費用」
家を建てる時はまずマネープランを立ててみることが大事です。
マネープランを作って家に掛けられる「予算」が算出できたら、その「予算」は土地と建物費用だけではなく、登記代などの「諸費用」、エアコン、カーテン、引っ越し費用も全部入れて、住み出すまでの総額だと思ってください。
土地・建物のみを「予算」としてしまうと、諸費用等の分で予算オーバーになってしまいますので、そこは注意してくださいね。

諸費用の金額がどのくらいになるのか?は、選ぶ土地、住宅ローンでも差がありますが、土地の諸費用は不動産屋さん、建物の諸費用については建築屋さんが建築費用の見積りを出してくれる時に、一緒に算出してくれるのが大半です。まれに諸費用がまったく含まれていない見積りも目にするときがありますので、その場合は別途どのくらい用意しなくてはならないか確認しておく必要があり、すべての金額を出してくださいとお願いしてみてくださいね。
住宅ローンの種類によって土地建物代の他に諸費用分を組み込めるものあれば、できないというものもあります。組み込めない場合は諸費用ローンを別に組むことになりますが、金利が高めな場合が多く、組み込める場合でも全体の借入額がかさんでしまうので、諸費用分については自己資金で用意できるとベストです。土地建物の1割などの頭金までは用意できないという場合でも、諸費用分の200万円が用意できる位、計画的に建築計画が進められると良いと思います。

◇家を建てる大半の方が抱えてる「車のローン」
家を建てる方は30代の方が多く、お子さんがまだ小さくてお出掛けの機会も多く、家族みんなで乗れる車は300万とか結構いい値段がして、その車のローンや他のショッピングの分割払いが残っていたりする方が大半です。その場合、車のローン返済を残しつつ、住宅ローンを組むと何とか金融機関の審査は通った場合でも、住宅ローン+車のローンでは生活が大変になる場合があります。
車のローンがある場合の選択肢は、自己資金で完済する、そのまま残して住宅ローンと併用して支払う、住宅ローンに組み込んでしまう、があります。金融機関によっては、車のローンを住宅ローンに組み込むことができます。一括での完済が難しい場合は組み込むことも多いと思いますが、あと数年で終わる車のローンを35年返済にしてしまうと総支払額が増えるということと、すべての住宅ローンができるわけではないので住宅ローンの選択肢が限られるという面も出てきます。ローンをまとめられるのは気持ち的にも楽に感じられるかもしれませんが、もし頭金に充てられる自己資金があるのであれば、車のローン完済に充てた方がいいかもしれません。

◇老後にしわ寄せが来ないような計画を立てよう
住宅ローンの種類によっては、土地建物だけでなく、諸費用、車のローンなども組み込めますから、自己資金があまりなかったり、他の借入があったりする場合でも建てることは可能ということになります。でも当然、その分の住宅ローン借入額が大きくなったり、建築に掛けるお金を小さくせざるを得なかったり、自分たちに合った住宅ローンが選べなかったりといった点も出てきます。便利なのはもちろん良いのですが、しわ寄せが老後に出たりしないように、マネープランを必ず立てて計画的に建築準備を進めてくださいね。

更新日:2017年7月10日


菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできるようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。

 

 

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