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マネープランに必須の生命保険「団信」
文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 ファイナンシャルプランナー 菊地智恵 氏
◇入ってますか?生命保険
家を建てる方や家計改善などでご相談に来てくださる方には、生命保険の加入状況を必ず確認させてもらっています。
毎月、保険料をいくら支払っていて、何歳までの払込があるのかはマネープランに大きな影響を与えるものだからです。
保険料の払込だけで言うと、例えば30歳の方が月額15,000円の保険に加入していて、60歳で払込が終わる(保障は一生涯)のと、80歳で払込が終わるのとでは、総支払額に360万円の差がでます。
360万円、大きいですよね。しかも現役引退後の360万円は巨大です。
ファイナンシャルプランナー事務所を始めた5年前は、保険に入り過ぎていて、保険料が家計を圧迫しているケースなどが多く見られましたが、最近は保険ショップで見直しされる方も多いようで、医療保険+収入保障保険などの掛け捨ての組み合わせで、あまり保険料を掛けていないという方も多く見受けられるようになりました。しかし、「保険に1本も加入していません!」という方はまれにしかいらっしゃいません。
保険未加入の方はまれにしかいない、それもそのはずです。
全国の生命保険加入状況を確認すると、保険の世帯加入率は89%で9割の方が保険に加入(※1)していますので、1割の方にあたるのはまれなんですよね。
就職したら、結婚したら、子供が生まれたら、と保険加入を勧められる機会も多いはずなので、入っていて当たり前で入っていないと不安になるのでしょうね。
保険に入っている人からすると、保険に入っていないなんてチャレンジャー!と思うかもしれませんが、病気などのリスクに対して、高額療養費制度などの社会保障を知った上で、預貯金などでまかなう考えがあって未加入という方もいらっしゃいます。何となく入りそびれて未加入とはまったく意味が違います。
◇保険はあくまで手段
保険はさまざまなリスクをまかなう“手段の1つ”です。
ケガなどで入院する、ガンなどに罹患して治療をする、大病に罹患して働けない場合の生活費がいる、病気で仕事になかなか復帰できない、介護状態になる、病気や事故で亡くなる、などなどのリスクに自分は何で備えるのかを考えておく必要があります。
リスクへの備えを考えた場合、高額療養費制度、傷病手当金、障害年金、遺族年金、介護保険などの保障を基礎として、不足している部分を他の手段で補います。すべてを民間の保険でまかなうでもいいのですが、保険料がかさむ可能性があるので、この部分は預貯金、この部分は民間保険や損害保険、この部分は他の手段など、家計とのバランスをとることも大切です。
支払う保険料に納得できるかどうか、ここもとても重要ですね。
◇団体信用生命保険という強い味方
団体信用生命保険とは住宅ローン用の生命保険で、住宅ローン契約者の方が死亡・高度障害状態になった場合、残りのローンはこの生命保険で完済するというものです。略して「団信」と言われています。
住宅ローンは通常、収入の担い手の方が組むことが多いので、万が一のことがあると、残ったローンはどうなるの?家に住み続けていいの?となりますが、団信に加入していれば、ローン返済に困らず、家に住み続けることができることになります。
銀行で住宅ローンを組んだ方は、団信の加入が必須ですので、加入している意識がなくても、団信に加入しているはずです。団信の保険料は別途支払う必要はありませんが、三大疾病特約などがついていると金利に0.2%上乗せになったりします。
住宅金融支援機構のフラット35については、平成29年10月から金利に含まれるようになりましたが、それまでは毎月の返済とは別に、年払いで保険料を支払う形でした。保険料の支払がストップしてしまうと、最悪「団信脱退」となるので、万が一のことがあってもローンが残ってしまいます。金利に含まれて毎月支払うという形になったことはありがたいですね。
団信にも特約で、ガン・脳卒中・心筋梗塞などで「所定の状態」になった場合にローンが完済される仕組みがあります。注意すべき言葉「所定の状態」、各社違いがあったりしますので事前に確認しておく必要があります。
実際、私のお客様が三大疾病特約付きの団信に加入していて、とても助けられたという方がおられます。特約付きだと金利上乗せになるので、支払いの負担がありますが、住宅ローンを組む時にしか団信は加入ができないので、各種比較検討してみてください。キャンペーンで特約付き団信に金利負担がなく加入できる時期があったりもしますので、情報収集は大事ですね。
◇健康じゃないと住宅ローンが組めない?
団信も生命保険の一種なので、申し込む際に健康状態を告知して、生命保険会社が判断して加入しますので、持病や既往症によっては団信に加入できない場合があります。
銀行によっては、持病がある方でも加入できる可能性がある「ワイド団信」(金利は高くなります)があったり、フラット35は団信に加入しないという形を選ぶこともできます。ただし、加入しない場合は元々加入していた生命保険で万が一の時の住宅ローン分をまかなうことができるのかなどは確認しておく必要があります。
◇「保険は大黒柱にしっかり掛けておけばいいだー」?
団信に加入したら、生命保険を見直せると一般的に言われています。確かにそうで、住宅ローンを組む前と住宅ローンを組んだ後の「必要保障額(万が一のことがあった時に残された家族に必要な額)」には団信分の差が出ることなります。保障が重なっている部分の保険は削ることができるので保険料を減らすことができる可能性はあります。
でも、そこを見直すだけでは100点満点中50点くらいなんです。
残りの50点は、前半で述べたリスクへの備えをしておくことと、大黒柱や住宅ローンの債務者になっていない、「奥様」の保障をしっかりしておくことです。会社員の夫と妻では万が一の時に受け取る遺族年金には大きな差が出ます。夫と妻、それぞれに万が一のことがあった場合の必要保障額を計算すると、奥様に万が一のことがあった場合が圧倒的に不足するような保険の入り方をされている方が多いのです。住宅ローンの組み方にもよりますが、夫の保険を見直すだけでは十分とは言えませんので、注意してくださいね。「保険は大黒柱に掛けていればいいだー」ではないんですよ。
※1 生命保険文化センターによる、平成27年12月発行「生命保険に関する全国実態調査」より
更新日:2018年4月4日
菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできるようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。