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「今は家を建てない方がいいですよ」って愛しかない
「今は家を建てない方がいいですよ」って愛しかない
文:株式会社あいFP事務所 代表取締役 ファイナンシャルプランナー 菊地智恵 氏
家が欲しいという相談に来られる方から、現在と今後の収入と支出の状況を伺って、家に掛けてもいい金額を計算するのですが、そうすると「今は建てない方がいい」とお伝えしなくてはならないことが“ごくまれ”にあります。
個人信用情報上の問題で借入が難しいという方を除いては、いま返済中のショッピング・カーローン等々の借入が大き過ぎたり、所得が少ない(主に自営業者)、支出が著しく多く改善が見込めない、等々の理由で、今ではなく〇年後にした方がいい等をお伝えします。
今すぐ家が欲しいと思っている方にはとても酷な話になるかもしれません。
でも、建てる時期の見極めは非常に重要なのです。資金計画を立てずに家を建てて、住宅ローンが家計を圧迫し、何かのタイミングで破綻する数は25人に1人と言われています。破綻はしないまでも、毎月大変だと思いながら返済している方は多いはずです。
せっかくのマイホームなのに、苦しいと思いながら生活して欲しくはありません。
「今は建てない方がいい」と言うのが“ごくまれ”というのは、家を建てるのと同時に、家計の見直し等々も必ず行っていただくことが前提で、家に掛けてもいい金額を算出しているからです。ちゃんと計算しているからこそ、出せる数字で、その方にしか当てはまらない内容です。
「年金生活になってからの住宅ローン返済は大変なので、退職金で支払いを終えられないのであれば、家を建てずにずっと賃貸でいた方がいい」とアドバイスをするFPの方もおられます。
ずっと家賃支払いがあることになるので、一生涯の住まいに掛かる総支払額でみると、賃貸の方が高い可能性もあるので、支出が抑えられるという意味合いより、借金を背負うという責任がない、家賃の安いところにいつでも引っ越せるという身軽さで賃貸という選択肢も一般的にある、ということなのかと想像します。
ただ、住宅ローンを組んでから返済中に大病などに罹った場合、団信の内容によっては支払いが免除になりますが、賃貸にはそういった保障がないので、その分の保障を保険等で用意する必要があります。
同じ「家を建てない方がいい」という話でも、一般的な話が皆に当てはまるとは限りません。自分なりの人生設計が必要です。
家を建てる時にこの金額だったら、建てても安心して返していけるという金額は、住宅ローンを借りられる金額とはまったく違います。計算した結果、思うような新築が建てられないということになる可能性もあります。イヤなこと言われたくないから、相談したくないという方もいるかもしれませんが、ローン返済で将来苦しむ可能性と比べてたら屁でもないでしょう。
建てない方がいいですよ、という厳しい言葉には愛しかありません。ぜひ自分だけに向けられた言葉で判断してください。結果、あの時の決断は良かったとなるはずです。
更新日:2021年5月25日
菊地 智恵(きくちともえ) 氏
株式会社あいFP事務所 代表取締役。
ファイナンシャルプランナー、住宅ローンアドバイザー、貸金業取扱主任者。会津若松市出身。住宅ローン取扱業務の経験後、『特定の会社に属さず、客観的な立場から住宅購入をサポートできるようになりたい』という想いの元独立。住宅購入を専門とするファイナンシャルプランナーとして、第三者的な立場から住宅購入相談を行っている。住宅購入では『知っているか知らないか』だけで将来の家計に1,000万円以上の違いが生まれることから、正しい知識の普及にも努めている。